週末の過ごし方
新品よりも“ずっといい”。
期間限定ストアで体感する、パタゴニアの哲学。
2025.06.17

環境への意識が高まるなか、消費の在り方を見直す動きが広がっている。その最前線とも言えるストアが、東京・京橋に誕生した。アウトドア企業・パタゴニアが展開する「Worn Wearポップアップストア」も併設された、8月18日までの期間限定の店舗だ。
「BETTER THAN NEW」
パタゴニア 東京・京橋店は、2025年3月にビルの老朽化により閉店したパタゴニア 東京・丸の内店の代替として開設された。新店舗がオープンするまでのあいだの期間限定ストアという位置づけだ。
販売を担う店舗スペースとは別に、ギャラリーのような雰囲気をもつ「Worn Wearポップアップストア」が併設されており、パタゴニアの哲学を視覚的・体験的に伝える空間となっている。
「私たちが地球のためにできる最善のことは、モノを長く使いつづけ、全体的な消費を減らすこと」。そう語る同社が掲げるのは、「BETTER THAN NEW(新品よりもずっといい)」というメッセージ。ファッションやアパレルの世界では、“新しいものを買うのがいちばん”という価値観が根づいているが、そんな常識に対して、あえて「長く着ることのほうが豊か」と伝えるこの言葉には、やさしくも力強い思いが込められている。
「Worn Wearポップアップストア」では、中古ウエアの販売に加え、修理されたアイテムと、それを着つづける人々のストーリーが展示されている。
思い出と共に受け継がれていく

たとえば、およそ30年前から同じフリースを愛用しつづける、シーカヤックガイドの男性。穴の開いた箇所は自ら修理し、今なお現役として海に出ているという。
別の展示では、母から娘へと受け継がれたウエアが紹介されている。冷え込む朝の登山で「お母さんのを持っていったら?」というひと言が、そのウエアに新たな役割を与えた。製品の寿命は、その人の人生とともに延びていく。そう感じさせるストーリーが並ぶ。
展示されているウエアは、単なる“中古”ではない。すり切れた生地、縫い直された糸、たき火跡のようなシミ。そのひとつひとつに、旅や冒険、日々の暮らしの記憶が刻まれている。「着るものだけど、それ以上のものがある」と感じることができるだろう。
消費を見直す、新しい価値観

パタゴニアは中古ウエアの買い取り・販売も行っていて、中古ウエアの売れ行きは好調だという。背景には、「まだ使えるものを生かしたい」という意識の広がりがある。また近年は、購買に対する価値観も変化してきた。毎年新しいものを買い足さなくても、自分の中にある感覚や価値に気づき、すでに手元にあるものとていねいにつき合う――。そんな姿勢そのものが、豊かさを見直すきっかけになってきている。
リペアに対する意識も広がってきているようだ。パタゴニアには専門のリペアサービス部門があり、破れた箇所の「たたき修理」や「切り替え修理」など、用途や素材に応じてていねいに対応している。
不用品として引き取られたパタゴニア製品は、状態を見極めながらパーツとしても再活用。リペアを必要とする同じ素材の裏打ちの生地として使うことで、着心地や伸縮性を損なうことなく、ウエア本来の機能をよみがえらせる。まさに、長く使いつづけることを前提とした循環型の取り組みだ。

会場には、実際に修理されたクライミング用のパンツも展示されていた。年季の入ったアイテムではあるが、傷みを生かしたようなセンスのあるリペアが施されており、修理のビフォーアフターも確認できた。修理料金は、ウエアの破れ、生地抜け(10×10㎝~50×50cm)で、2200円〜7000円程度と、アイテムの状態に応じて価格帯が明示されている。
また、パタゴニアの防水性のジャケットであれば、洗濯・乾燥時に適度な熱を加えることで撥水機能が回復するなど、メンテナンスの知識も併せて紹介されている。

街と自然をつなぐ場
「環境問題」というと、つい難しく構えてしまいがちだ。しかし、パタゴニアはいつも、私たちのライフスタイルに寄り添いながら大切なことを教えてくれる。
今シーズンは、新たに廃棄漁網を再資源化した「ネットプラス」素材を使ったシリーズが登場。リサイクル素材ながら高い耐久性と軽さを兼ね備え、ショーツやキャップ、定番の夏用パンツなどに展開されている。こちらはぜひ、店頭でチェックを。
京橋エリアには、ビジネスパーソンが多く行き交い、皇居ランナーなどアクティブな層の姿も多い。店内に設けられたトレイルランニングコーナーも人気で、スタッフ自身もスポーツや環境問題への理解が深く、来店者とのコミュニケーションを大切にしているので、買い物や修理のためだけではなく、「ちょっと立ち寄って話を聞く」。そんな交流の場としても、パタゴニアのストアを訪れてみてもらいたい。
会期中には、買取&リペア相談イベントや、防水性シェルのメンテナンス方法を学べるワークショップも予定されている。ウエアとの付き合い方を深める良いきっかけになるだろう。

Worn Wear 京橋 POP UP STORE
会期:2025年6月7日(土)~8月18日(月)
営業時間:11:00~19:00
定休日:毎月第3水曜日
会場:パタゴニア 東京・京橋(期間限定ストア)
東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル1階 BAG-Brillia Art Gallery-
TEL:03-3214-2101
<イベントスケジュール>
Wash Care Event
2025年7月5日(土)・6日(日)
時間:12:00〜17:00
防水性シェルの洗濯・撥水方法を実演。PFCフリーのSTORM製品のサンプル配布あり。
買取&リペア相談
2025年8月2日(土)・3日(日)
時間:11:00〜18:00(受付は17:00まで)
不要になったパタゴニア製品の買い取りと、簡易修理をその場で実施。
※買取について
・買取業務は委託先の株式会社ティンパンアレイが提供します。
・機能に問題がないパタゴニアの中古のウエアやラゲッジ、アクセサリーを受け付けます。
・洗濯後の製品をお持ちください。
・買取プログラム基準により、一部製品は買取対象外となります。詳しくは「買取対象製品と買取価格の目安」でご確認ください。
Text:Tomoko Komiyama